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読書感想文:すべてがFになる(森博嗣)

読書感想文:すべてがFになる(森博嗣)

読書感想文:すべてがFになる(森博嗣)


実用書から小説へ──価値観の転換

これまでの私は、どちらかといえば仕事や生活に直結するような実用書ばかりを読んでいた。本を読むのは「知識を得るため」「役立つことを学ぶため」——そんなふうに捉えていたからだ。


しかし森博嗣さんの『すべてがFになる』を読んで、その価値観が一変した。理系ミステリというキャッチーな響きに惹かれて読み始めたこの作品は、ただの推理小説ではなかった。密室殺人というクラシックな題材の中に、「人間とは何か」「自由とは何か」という深い哲学的な問いが静かに息づいており、読後には不思議な余韻が残った。


シリーズへの没頭と発見の喜び

この一冊がきっかけで、S&Mシリーズや四季シリーズ、そして『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei's Last Case』へと読み進むうちに、作品の中にちりばめられた仕掛けや構造の巧妙さにどんどん惹かれていった。物語の外側にまで広がるような伏線や、登場人物たちの言葉の端々に潜む意味を読み解いていく時間は、とても刺激的だった。


キャラクターたちの会話がいちいち含蓄深く、しかも理詰めで容赦ない。人間とはなにか、自由とはなにか、常識って何なのか——読者は常にそう問われている感覚になる。


森博嗣の小説を続けて読むうちに、「この人、小説のフリしてずっと人間の構造について考えているな」と気づいた。そしてある日、彼のエッセイ(実用書的なもの)を読んで「わかる……!」と思わず声が出た。これが共感というものか。ここまで来ると、もう小説ではなく作者そのもののファンになっていた。特に犀川先生の冷静すぎるセリフの数々にキュンキュンする。


構造の美しさと哲学的な問いかけ

事件の構造はシンプルなのに、そこに至るまの道筋が複雑で美しい。"すべてがFになる"というタイトルの意味が明らかになったとき、思わず「おーーー」と声が出た(地味に)。

真賀田四季という登場人物は天才すぎて、怖すぎる。「人間って何だっけ?」と問いかけられている気がして、ミステリを読んでいたはずなのに哲学対話をさせられている感覚になる。


事件のトリックももちろん面白いが、それ以上に登場人物たちの会話がクセになる。小説なのに、読み終わると"考え方の道具"を一つもらったような感覚がある。


『すべてがFになる』は、物語としての面白さ、論理的な美しさ、そして静かに差し出される問いかけを兼ね備えた作品だ。私にとって「小説って面白い」と気づかせてくれた特別な一冊。

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